うんちく−その3

類人猿上肢の解剖


Latest update: 2006.10.25

 類人猿(ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)は現地球上で人類に最も近い存在です。人類の祖先は彼らのご先祖と共通であるとされ、オランウータンのご先祖から600万年前に分家し、さらにゴリラやチンパンジーのご先祖とは約450万年前に分家したと考えられています。現チンパンジーからヒトが出来たのではありません、お間違えのないように願います。と言うことは、ン100万年後の人類は今とは違った姿形かも知れません、存在していれば・・・ですが。「人類は万物の霊長」とか、「人間だから」「人として」などと威張っていますが、長〜〜〜〜い目で見れば、かならずしも特別な存在でないことが判ります。いまでも彼ら類人猿と共通な部分が見えてきますし。
 ここでは、論文化できない蘊蓄を勝手気ままに書きますので、期待?してください。
 なお、類人猿解剖には国立科学博物館、広島市安佐動物公園、沖縄こどもの国動物園のご協力を頂きました。特に国立科学博物館に於いては、全国各地研究者との共同作業でした。貴重な標本に触れる機会を与えて下さいました関係各位に深甚なる謝意を捧げます。


 左からゴリラ、チンパンジー、オランウータン(広島市安佐動物公園にて1992年筆者撮影)
左のゴリさんはご主人を亡くして悄然と?しています。その後、上野に引っ越されました。
故国から遠く離れて何思う 柵の向こうのヒトの観察?
なお、彼らの個人情報・肖像権に関しては本人達の了解を得ていません。ここにお詫び申し上げます。

 彼らを解剖しての感想:まず一皮剥けば我々人類と同じ色の同じ様な構造が現れること。これは白人も黒人も表皮を取り除けば何の違いもない事に似ている。チンパンジーなど人間にそっくりで、親近感さえ湧きます、「あ、ご親戚」と。
 動物園のチンパンジーの群の中には、やんちゃ坊主もいます。柵の前に人を見るや何か(フン)を投げつけるとか。体を揺らして獲物を物色したりしゃがんでいる様は、駅前やコンビニ前にいるアンチャンの姿そのものです。これはその他のチンパ諸君に失礼でしたな。
 ゴリラは概ね穏やかに暮らしています。紳士だから人前で連んだりしないので個体数も減っています。その点チンパは遠慮がありません、繁殖能力充分です。アフリカで減っているのは人間が食っているからです。オランはどこ吹く風でマイペースです。やはりボルネオの森林開発で住処を追われています。木材の多くは日本に運ばれています。
 ゴリラの怪力には逸話があります。握力計では測れませんが、飼育員が前日にスパナで締め付けた扉のボルトを、夜の内に外してしまったそうです。「何せ彼らも暇ですからね」とのこと。ちなみに、ヒトが類人猿と大きく違う点に母指の発達があります。ゴリラさんは示指と中指を使ってボルトを外したらしい。

 類人猿解剖裏話

 日常診療の合間に暇を見つけてする遠方での解剖には時間的制約があります。残りをこなすにはお持ち帰りさせていただくこともありました。ビニール袋に梱包した上で大きなコンテナに詰め、背負子で担いで駅の階段を上がるのはなかなかにしんどいものがあります。我が国の駅には通常エレベータもエスカレータもありません(最近は少しづつ整備されていますが)。いい年した頭の薄いおっさんが旅行鞄ならぬ背負子を担いで駅や列車をうろつく不審な姿を見かけたら私かも知れません。
 持ち帰った後は自宅に設置したマイナス30度対応の冷凍庫に保管します。保管したらしたで、これまで忙しさ故にたまにしか手がつけられず、借りっぱなし状態でしたが、この度、幸いなことにまとまったお暇をもらったので解剖に勤しみ、半ば解剖三昧の日々を送りました。お休みが終了するまでに目出度く解剖を終わり、骨のレプリカをレジンで作成した上で、骨を元の施設にお返しいたしました。今頃は骨格標本になっていることでしょう。解剖三昧のお陰で、お休み中もメスを持つ腕が鈍ることはありませんでした。復帰後の手術に不安がなかったのもその性でしょう。転んでもただでは起きません。

続く・・・・・予定



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