足関節捻挫


latest update: 2006.04.19

 単に走っていても足を捻ってしまう場合があります。特にお子さんの場合はバランスをとる筋力も未熟で、大人のようには踏ん張りが利かずに捻挫し易いようです。一方大人でも、バレーボールやバスケットボールでジャンプし、着地の時に他競技者の足の上に乗ってしまい、捻挫するパターンが多く見受けられます。つまり足下が予想に反して不安定な場合は、捻挫を防ぎようがありません。
 足関節捻挫はスポーツ選手なら日常茶飯事かも知れません。たかが捻挫、されど捻挫です。侮ると後で不都合を残しますので、治療の必要性については医師に判定してもらいましょう。

捻挫の種類について

 捻挫とは関節に異常な力が働いて関節包が損傷することで、すなわち関節包の一部である靱帯が傷つくか破れる(断裂する)と言うことです。
 足首周辺の捻挫には、場所・受傷形態(捻り方)・程度によりいくつか種類があります。
1)足関節外側靱帯損傷(いわゆる内返しで発生します)
 a) 前距腓靱帯損傷
 b) +踵腓靱帯損傷(a,b 共に右図黄色部分)
2)足関節内側靱帯損傷(いわゆる外返しで発生します)
 a) 三角靱帯損傷(右図向こう側に隠れている)
 b) +脛腓靱帯損傷(右図桃色部分)+腓骨骨折
3)足部捻挫(足首よりも足自体を捻ったときに発生します)
 a) 二分靱帯損傷(右図緑色部分)ないしショパール関節捻挫(右図青矢印) 
 b) 第5中足骨基部骨折またはリスフラン関節捻挫(右図赤矢印)
4)足関節骨折・脱臼骨折(見かけ上の骨折のみならず往々にして靱帯損傷を合併し、脱臼骨折の一型と考えるべき場合が多い)
 a) 骨端軟骨損傷(成長期) 
 b) 骨折・脱臼骨折
 以上の内、最も頻度が高く、かつ治療の必要な、足関節外側靱帯損傷について述べます。

足関節 外側靱帯損傷

 足関節外側捻挫で最も頻度が高い型です。足が強く内返しになった場合に、足関節の外側が引っ張られて、足関節外踝(腓骨遠位部、外くるぶし)と距骨をつなぐ靱帯の前方成分すなわち前距腓靱帯(上図黄色横方向)が引っ張られて断裂します。よく”靱帯が伸びた”と表現する患者さんもありますが、靱帯は決して伸びるものではありません。伸びて見えると言うことは即ちブチ切れた(断裂した)と言うことです。
 さらに大きな力が加われば、腓骨とかかとの骨を結ぶ踵腓靱帯(上図黄色縦方向)も断裂して足関節の外側は更に不安定になります。

症  状

 足首の外側が腫れて痛みます。捻挫の直後から強く痛むとは限りません。直後は我慢して運動を続けたものの、夕方になって次第に腫れと痛みが増し、入浴や飲酒によって痛みが悪化して歩けなくなり、夜間病院の門をたたく方もあります。

診  断

 レントゲン撮影をします。その目的は、骨折の有無を見るためと、捻って撮影(ストレス撮影)することで靱帯損傷の有無を確認することです。骨折がない限り靱帯損傷自体はレントゲンに写りませんが、ストレス撮影をすることで関節の不安定性が証明されれば、靱帯断裂が明らかになります。関節の柔らかさには男女差があり、男性では距骨傾斜角が5度未満、女性では10度未満が正常です。男性で10度、女性で15度以上有れば靱帯は断裂しているはずですし、20度以上は重症と言えます。重症とは、前距腓靱帯に止まらず、踵腓靱帯や関節包の広範な断裂があるはずです。

治  療

 治療方法の選択は、靱帯損傷の重傷度、スポーツレベル、治療レベルの要求度、社会生活上の制約などに左右されます。つまり、致死的疾患でもないので、患者さんと相談の上で治療方法を選択することになります。以下は一般論について述べます。
0)RICE 怪我の急性期に共通する治療原則に RICE 療法があります。すなわち、R=Rest(安静)I=Icing(冷却)C=Compression(圧迫)E=Elevation(挙上)の4つを言い、受傷部の炎症や腫脹を軽減させるための処置ですが、特に冷却を実行するために、スポーツ現場には氷を常備したいところです。
1)包帯固定 軽度の捻挫なら、痛みがある1〜2週間、弾力包帯固定しておけば痛みも比較的軽く、安心感があります。湿布を追加しても構いません。
2)テーピング
 スポーツ選手の場合、現場復帰可能な程度の怪我なら、テーピング固定をすることが多いでしょう。上手なテーピングは怪我の悪化を防ぎますが、1日の内でも度々巻き替えることが必要で、慣れない内は煩雑に思うかも知れません。関節によって、あるいは使い方次第では充分な固定性が得られないことがあります。
3)ギプス固定 すぐ復帰する必要がなければ、ギプス固定が確実です。部位にもよりますが、3週間程度の固定で軟部組織損傷は50%程度落ち着きます。ギプス固定終了後は、必要に応じて各種のサポーターを利用して保護します。
4)手術(靱帯縫合) 重症の靱帯断裂の場合、いたずらに経過観察で治癒を長引かすのではなく、手術的に靱帯を縫合して安定性を獲得することが、かえってスポーツ現場への復帰を確かなものにする場合があります。特にスポーツ選手の場合、周辺の筋力を落とさないためにも、安静期間を最小限に出来る手術法の選択と適切な後療法が必要で、高度な判断と技術が要求されます。


小児の靱帯損傷の特殊性

 小児の靱帯損傷では大人と異なり、靱帯そのものの断裂より、靱帯付着部が骨から剥奪する場合が多く見られます。その際、小骨片を伴いやすく、ギプス固定などできちんと治療すれば治りやすいとも言えます。
 この小骨片は単純レントゲンでは見逃しやすく、やはり上述のようにストレス撮影で検出できます。右図は6歳児で、一部コントラストを上げて見やすくしています。矢印の骨片は図の様にストレスを掛けて初めて明らかとなりました。
 骨同士は癒合しやすいので、出来ればギプス固定して骨癒合を図ります。この骨片を見逃すと、将来また捻挫などでレントゲン撮影をした際に大きな遺残骨片として検出され、「小さい頃に捻挫したでしょ?」と医師に指摘されることになります。5歳頃1〜2mm程度だった小骨片も成長と共に大きくなり、高校生頃には5mm以上になっています。



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